「プレコンセプションケア」妊娠前の健康管理が大切な理由
「プレコンセプションケア」、略して、プレコン。女性やカップルが将来の妊娠前に健康管理や生活に向き合うことを目指して、2012年に世界保健機関(WHO)が提唱しました。
コンセプション(Conception)は、〔妊娠初期の〕受胎のこと。つまり「プレコンセプションケア」とは、赤ちゃんを授かるチャンスを増やすために、前もって女性やカップルが健康な生活を送ることを目指したもの。
すでに日本でも、保険会社や大手企業グループで、プレコンのセミナーが開催されており、国立研究開発法人 国立成育医療研究センターでは、「プレコンセプションケアセンター」を開設。
プレコンの背景には、妊娠や不妊についての知識が不足しているだけでなく、日本の不妊治療患者の年齢層が、世界的にみても、かなり高齢化していることが背景にあるようです。
不妊治療患者の高齢化
日本での不妊治療患者の年齢層は、年々高齢化しています。
日経新聞の記事によれば、ニッセイ基礎研究所の乾愛さんが、日本産科婦人科学会の19年のデータで、不妊治療の実績を年齢別に集計したところ、なんと不妊治療患者の32%が40歳以上とのこと。
米国や英国では、40歳以上は2割ていどだそうですから、40歳以上が3割を超えているのは異常と考えてよいかもしれません。
女性のワークバランスが、妊活よりも仕事を優先、あるいは優先せざるをえない日本の特殊事情が、妊活適齢期をかなり過ぎてからの不妊治療につながっているようです。
40歳での自然妊娠の確率は5%、45歳になると1%と言われます。40歳を過ぎてからの妊活はとても難しいだけでなく、めでたく妊娠できたとしても、胎児の先天性異常などのリスクが高くなることを知っておいたほうがいいでしょう。
「プレコンセプションケア」啓発動画2022
国立成育医療研究センターが作成した「プレコンセプションケア啓発動画2022」では、赤ちゃんの先天異常などを防ぐために、妊娠前からおこなったほうが良い健康管理について解説しています。
近年、とくに心配されるのが、栄養不良によるやせ型の女性が増えていること。近年、赤ちゃんの出生体重が減っていることと関係があるようです。妊娠で不足しがちな栄養素・葉酸について、サプリメントで補うことを推奨しています。
※出典:「プレコンセプションケア啓発動画2022」
また、40歳を過ぎてからの不妊治療が増えている現状からは、高齢出産のリスクを考えると、できるだけ妊娠適齢期に赤ちゃんを授かったほうが良いことがわかります。
「赤ちゃんの出生体重」と「女性のBMI」との関係
近年、赤ちゃんの出生体重が減っています。
赤ちゃんが産まれたときの体重は、約3kgと言われていましたが、最近の平均は2,900g台。お母さん世代と比べると、なんと190gも少ないそうです。
こちらのグラフが、赤ちゃんの体重の推移です。
※出典:「プレコンセプションケア啓発動画2022」
この背景には栄養不良によるやせ型の女性が増えていることが関係しているようです。以下のグラフは、年代別・20代女性のBMIです。
※出典:「プレコンセプションケア啓発動画2022」
日本では、理想の体型はBMI18.5~25とされていますが、20代女性の約2割がBMIが18.5以下だそうです。ちなみに、もっとも病気になりにくいとされているのは、BMI22です。
【例】体重45kg、身長160cm なら、BMI:17.6
※このBMIだと「やせ型」。ちなみにBMI 22 だと、体重は56.3kg。
栄養不良と言われてもピンとこないかもしれませんが、ダイエットや偏食などによって、栄養不足あるいは偏ったやせ型の女性が増えているのです。
栄養不良(やせ型)の妊婦さんのリスク
偏食、ダイエット、食習慣の乱れによって、栄養不良の身体になると、先天異常の可能性が高くなると言われます。
つまり、やせ型の妊婦さんの場合、「妊娠合併症」のリスクが増えるだけでなく、栄養不良によって、「先天異常」で産まれてくる赤ちゃんの割合を高くするかもしれません。
大切なのは、妊娠前から注意していれば、未然に防げる先天異常があるということ。つまり、器官形成期の(葉酸不足、風疹ウィルス感染、高血糖)は、プレコンの知識があれば予防できることになります。
国立成育医療研究センターでは、これらのリスクを未然に防ぐために、葉酸サプリメントを摂ることを推奨。葉酸サプリメントをとることで、神経ができる段階での先天異常を約4割減らすことができるとしています。
妊娠前から、葉酸サプリメントをしっかり摂ることで、「二分脊椎等の胎児神経管閉鎖障害」の発症リスクを減らすことができ、年間242人もの「神経管閉鎖障害」の減少につながるそうです。
妊娠の「適齢期」について
閉経前なら、いつでも赤ちゃんを授かることができるわけではありません。
高齢になると、妊娠確率が急激に下がるだけでなく、流産、染色体以上、妊娠合併症のリスクが高くなります。
まず、「プレコンセプションケア啓発動画2022」から、卵子の数の推移を見てみます。
※出典:「プレコンセプションケア啓発動画2022」
卵子は、胎生20周までに700万個まで急増しますが、出生時には200万個まで減少します。その後、思春期には20~30万個まで減少し、閉経するときには、ゼロに近くなっています。
高齢での妊娠(妊活)では、不妊や流産、染色体以上、妊娠合併症のリスクが高くなりますから、年齢が若いほど妊娠にともなうリスクが減ると思うかもしれません。
しかし、10代での妊娠は、早産などの妊娠合併症のリスクが増えるとのこと。健康面から推奨されるのは、20代での妊娠。20代が妊娠の適齢期となるようです。
男性の適齢期は?
男性にも、妊活の適齢期があります。こちらが、男性の年齢別累積妊娠率です。
※出典:「プレコンセプションケア啓発動画2022」
若いほど妊娠率が高いことは、グラフでも一目瞭然です。男性が高齢になるほど、流産、先天異常、精神疾患を持つ赤ちゃんの割合が多くなることがわかっています。
妊活サプリには、女性だけでなく、男性の栄養も考えあわせた「葉酸サプリ」があります。葉酸サプリを夫婦で飲むことが大切と言われますが、カップルで健康を考えることは、プレコンの基本といえます。
「プレコンチェックシート」
「プレコンセプションケア」では、すべての女性とカップルに、妊娠前にぜひチェックしていただきたい内容がまとめられています。
女性・男性別になっていますので、一度チェックしてみてください。
<女性版>
※出典:「プレコンセプションケア啓発動画2022」
<男性版>
※出典:「プレコンセプションケア啓発動画2022」
いくつチェックできましたか?少しでもチェック数が増えるように、心がけましょう。男性のチェック項目には入っていませんが、不足しがちな栄養素・葉酸サプリの摂取は早めがよさそうです。
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