体外受精や顕微授精などについて、2022年4月から保険適用となる方向での具体的な検討が始まりました。
不妊治療の経済的負担は、子どもが欲しくてもあきらめざるをえない大きな理由の一つになっています。
野村総合研究所が、2021年3月に厚生労働省に提出した報告書「不妊治療の実態に関する調査研究 」によれば、不妊治療がより受けやすくなるための期待として、76.7%の方が「自己負担の軽減」をあげています。
体外受精や顕微授精が保険適用になるのを待ちたいところですが、不妊治療は年齢が若いほど有利。経済的に無理がなければ、健康保険適用を待たずに不妊治療をはじめるべきでしょう。
[2020年4月以降]保険適用が予定されている不妊治療
2022年4月から保険適用が検討されている不妊治療について、確認しておきます。
ここで紹介している不妊治療は、特定不妊治療として、国の助成制度の対象となっています。
- 人工授精
・夫の精液を注入器で直接子宮に注入する方法で、おもに夫の精液の異常、性交障害などの場合に用いられます。1回の費用は3万円前後で、6回程度おこなっても妊娠出来ない場合、次のステップへ進みます。 - 体外受精
・女性から直接採卵し、卵子に精子をかけて自然に受精するのを待ちます。採卵時の身体的負担が重く、1回の費用は50万円ぐらいかかります。 - 顕微授精
・体外受精のうち、顕微鏡下で、細いガラス管などを使って精子を卵子に直接注入し受精させる方法です。1回の費用は50万円ぐらいですが、通常の体外受精より高めです。 - 顕微鏡下精巣内精子回収法(MD-TESE)
・男性に対する治療法で、精液中に精子が存在しない場合、手術用顕微鏡を用いて精巣内より精子を回収します。費用は、30万円前後です。
不妊治療のステップと費用
一般的な不妊治療では、タイミング法 ⇒ 人工授精 ⇒ 体外受精 ⇒ 顕微授精 へと進みます。
人工授精、体外受精、顕微授精については、現在、保険適用が無く、ステップアップにともない、精神的・経済的負担が大きくなります。
人工授精は、1回の費用は3万円前後ですから、体外受精や顕微授精とくらべると、費用負担はそれほど大きくありません。それでも治療回数が増えれば、精神的・経済的な負担は大きくなります。
体外受精や顕微授精は、どちらも1回50万円前後なので、人工授精とくらべるとケタ違いの費用です。医療機関によっては、80~90万円前後のところもあるようです。
不妊治療にかかる費用は、300~500万円と言われますが、女性の年齢が高くなるにつれて成功率が下がるため、最終的に治療をあきらめるカップルも少なくありません。
日本産科婦人科学会の指針では、人工授精を6回程度おこなっても妊娠できない場合は、体外受精をおこなうことを推奨しています。
女性の年齢が高く(35歳以上など)なるほど、妊娠できる確率が下がりますから、人工授精を2~3回試してから、体外受精へとステップアップすることをすすめるクリニックもあります。
40歳以上になると、はじめから体外受精をすすめるクリニックもあるのは、無事に出産できる確率が急速に下がるからです。
体外受精や顕微授精の高額な治療費用を考えると、保険適用になってから不妊治療を受けたところですが、年齢や不妊の原因によっては、早めにより確率の高い治療を受けたほうがいいでしょう。
[現行]保険適用の不妊治療は?
現行(2022年3月まで)保険適用となる不妊治療は、検査を含めてつぎの治療法が対象となっています。
<女性不妊の治療>
子宮奇形や、感染症による卵管の癒着、子宮内膜症による癒着、ホルモンの異常による排卵障害や無月経などで、手術療法や薬物療法が行われます。
<男性不妊の治療>
精管閉塞、先天性の形態異常、逆行性射精、造精機能障害などで、手術療法や薬物療法が行われます。
①排卵誘発剤などの薬物療法、②卵管疎通障害に対する卵管通気法、卵管形成術、③精管機能障害に対する精管形成術
現在、不妊治療で保険適用となるのは、費用負担が少ないものや、1回の施術で終わる治療に限られていることがわかります。
特定不妊治療費助成事業について
特定不妊治療費助成事業は、国の定めにもとづいて、都道府県・指定都市・中核市が運営しており、特定不妊治療で医療保険が適用されない治療費の一部を助成してもらえる制度です。
2021年4月以降、人工授精とあわせて、体外受精や顕微授精が保険適用になれば、特定不妊治療費助成事業は終了する計画です。
特定不妊治療費助成について、2020年12月末までは、所得制限や助成回数に制限がありましたが、2021年1月以降、つぎのように条件が緩和されています。
~2020年12月末 | 2021年1月~ | |
所得制限 | 730万円未満 (夫婦合算の所得) |
撤廃 |
助成額 | 1回15万円 (初回のみ30万円) |
1回30万円 |
助成回数 | 生涯で通算6回まで (40歳以上43歳未満は3回) |
子ども1人あたり6回 |
対象年齢 | 妻の年齢が43歳未満 | 変更せず |
体外受精や顕微授精は、妊娠できる確率が高くなりますが、1~2回の治療ではなかなか妊娠できないことは、国の助成金制度が、子ども1人あたり6回までとしていることからもわかります。
野村総合研究所の報告書によれば、回答者のうち特定不妊治療費助成事業を知らない人がなんと61%もいるようです。
特定不妊治療費助成事業は、2022年4月以降、保険適用の開始によって終了しますが、早いタイミングでの不妊治療が望まれる方は、保険適用になる前に活用したい制度です。
不妊治療を受ける前に取り組んでいること
不妊治療を受けるご夫婦の多くは、不妊治療を受診する前から、有効と考えられるさまざまな活動をおこなっています。
野村総合研究所の報告書「不妊治療の実態に関する調査研究 」2021年3月※回答数1,636 によれば、”特になにもしていなかった”のは、わずか13.4%で、活動内容のベスト5は以下のとおりです。
- 基礎体温を記録していた 61.4%
- 性行為のタイミングを調整していた 59.2%
- 食事療法やサプリメント、漢方の摂取等をしていた 37.8%
- 市販の排卵チェッカーを使用していた 24.3%
- 運動や温活(冷え予防)をしていた 24.0%
基礎体温のチェックや性行為のタイミング調整は、妊活では当たり前と思っていましたが、6割ぐらいしか実行していないことに驚かされます。
生活習慣を見直し、体調を整えることは、不妊治療のように妊娠の成否が確認できるわけではありませんが、不足しがちな栄養を補ったり、妊娠しやすい環境を整えるうえで有効です。
まとめ
結婚年齢の高齢化にともない、不妊治療を受ける年齢が年々高くなり、人工授精の成功率も低くなっているようです。
自然妊娠では、35歳を過ぎると妊娠率が下がり、流産の確率も高くなりますが、不妊治療の場合も同じです。
あるクリニックのデータによれば、1回あたりの人工授精の成功率は6%で、6回人工授精を実施した累積妊娠率でも25%程度とのこと。さらに、35歳を過ぎると、妊娠率は急速に下がります。
不妊治療は、早ければ早いほど成功率が高くなりますから、体外受精や顕微授精が保険適用になるのを待ってからの不妊治療は、けっして得策とは言えません。
子どもが欲しいと考えているご夫婦は、まずは体調や生活環境をととのえて、妊娠へ向けた準備をするべきでしょう。もし、1年過ぎても妊娠できないようであれば、早めに不妊治療をおこなうことをおすすめします。
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